ホテル・旅館のM&A|後継者不在の承継売却・仲介の選び方・手数料を宅建士が解説

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ホテル・旅館のM&Aとは、施設を土地・建物という「不動産」としてではなく、営業許可・従業員・取引先・予約データまで含めた「事業ごと」、次のオーナーへ引き継ぐ手法です。手法は大きく株式譲渡と事業譲渡の2つに分かれ、後継者不在の宿を黒字のまま残したい場合に多く選ばれます。

「子どもは継がない」「自分の代で終わらせたくない」——後継者不在を理由に承継を考え始めたオーナーが、最初に直面するのが「どこに相談すれば良いか」「会社ごと売るのか、建物だけ売るのか」「いくらで売れて、手数料はどれだけかかるのか」という問いです。

この記事では、ホテル・旅館のM&Aを検討し始めたオーナーに向けて、株式譲渡と事業譲渡の違い、相談先(M&A仲介・不動産仲介・旅館ホテル特化仲介)の選び方、承継売却の流れ、簿外債務や係争を切り分ける個別選択式デューデリジェンス、価格の決まり方、手数料構造までを、宅地建物取引士が実務に即して整理します。煽らず、断定せず、判断材料を揃えることを目的にしています。

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ホテル・旅館のM&Aとは何か? ― 株式譲渡と事業譲渡

ホテル・旅館のM&Aとは、施設を「事業ごと」次のオーナーへ引き継ぐ取引であり、その手法は主に「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つに分かれます。土地・建物だけを売る不動産売買と違い、営業許可・従業員・取引先・予約データといった「事業を動かしている要素」ごと引き継ぐ点が特徴です。

株式譲渡とは、宿を運営している会社(法人)の株式を買い手に売る手法です。会社の器がそのまま残るため、旅館業の営業許可、温泉利用権、従業員の雇用契約、取引先やOTA(予約サイト)との契約が原則そのまま継続します。手続きの中心は代表者や役員の変更登記で、許認可の取り直しが要らないことから、営業中の宿を止めずに引き継ぐ承継では、これが多く選ばれ、事実上の標準とされています。

事業譲渡とは、会社そのものではなく、宿という「事業」を構成する資産・契約を個別に選んで買い手に移す手法です。買い手は欲しい資産だけを選べる一方、許認可・契約・雇用は原則として個別に引き継ぎ直す必要があります。簿外債務などを会社ごと引き受けたくない買い手に好まれますが、後述するとおり営業許可の承継には2023年の法改正後も事前の承認手続きが必要です。

どちらが向くかは、簿外債務の有無、許可・契約の移しやすさ、税負担で変わります。一般論として、営業を止めずに丸ごと引き継ぐなら株式譲渡、リスクを切り離したいなら事業譲渡が検討されますが、最適なスキームは個別事情で変わるため、相談先と税理士を交えて早めに見立てるのが安全です。

営業許可・温泉権・OTAアカウントは引き継げる?

引き継げます。ただし手法によって段取りが大きく違い、特に営業許可と温泉利用権、OTA(予約サイト)アカウントの移転は、汎用のM&A仲介では見落とされやすい一次論点です。

旅館業の営業許可は、株式譲渡なら会社の許可がそのまま継続するため、原則として取り直しは不要です。事業譲渡の場合、改正前は買い手の新規許可取得が必要でしたが、2023年(令和5年)12月13日施行の改正旅館業法により、譲受人があらかじめ都道府県知事等の承認を得ることで、新たな許可取得なしに営業者の地位を承継できるようになりました。注意点は、承認が下りる前に経営権を移すと承継が認められず無許可営業とみなされるおそれがあることで、クロージングの2〜3か月前から保健所へ事前相談しておくのが安全です。

温泉利用権は、源泉の所有・引湯契約・組合への加入状況によって移転の可否や手続きが変わります。株式譲渡なら契約主体である会社が変わらないため継続しやすい一方、事業譲渡では引湯契約や温泉組合の名義変更について個別の同意が必要になる場合があります。温泉が宿の価値の中心である場合、ここが詰まると取引そのものが止まりかねないため、早い段階で権利関係を確認しておくことが欠かせません。

OTA(楽天トラベル・じゃらん・Booking.com等)のアカウントや口コミ・予約データも、宿の収益力を支える資産です。株式譲渡なら運営会社が変わらないためアカウントを維持しやすいのに対し、事業譲渡では各OTAの規約に沿った名義変更・再審査が必要になることがあります。長年積み上げた口コミ評価は買い手にとって大きな価値であり、その引き継ぎ方を交渉条件に織り込めるかどうかは、相談先の実務力が出るところです。

M&A仲介・不動産仲介・専門仲介、どこに相談すべき?

まず「事業ごと譲る」のか「不動産として売る」のかで相談先が決まります。事業ごと(許可・従業員ごと)の承継ならM&Aに通じた相談先、建物・土地の価値が中心なら不動産仲介(宅地建物取引業者)が軸になります。ホテル・旅館に特化した専門仲介は、その中間で宿泊業の論点に強いのが特徴です。

M&A仲介は、会社や事業の譲渡(株式譲渡・事業譲渡)を扱います。仲介業務そのものに業法・免許はなく、報酬は取引金額に応じて料率が下がる「レーマン方式」が一般的です。ただし大手では「最低手数料」が数百万〜数千万円規模で設定されることが多く、数千万円〜数億円規模の中小ホテルでは手数料が売却額に対して重くなりやすいのが実務上の留意点です。健全化は中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」(後述)と「M&A支援機関登録制度」(2021年8月創設・任意登録)が担っています。

不動産仲介(宅地建物取引業者)は、土地・建物の売買を扱い、宅建業免許が必須で、報酬は宅地建物取引業法で上限が定められています。重要事項説明や書面交付が法律で義務づけられ、媒介契約・レインズ登録のルールも明確です。建物・土地の価値で売る場合や、赤字・休業中で事業価値が付きにくい場合に向きます。

旅館・ホテル特化の専門仲介は、宿泊業に絞って売買・承継を扱い、営業許可の承継・温泉権・OTA移転といった宿特有の論点に通じている点が強みです。どれが正解ということではなく、自分のケースが「事業承継型」か「不動産型」かで向く相談先が変わります。判断がつかないうちは、まず切り分けの相談から始めるのが安全で、1社で決めず複数の見立てを比べるとミスマッチを避けやすくなります。

後継者不在の承継売却は、どんな流れで進む?

承継売却は「相談→簡易査定→候補探索→基本合意→デューデリジェンス→最終契約→クロージング」の7ステップで進みます。後継者不在を理由に検討を始めた場合、相談から成約まで数か月〜1年程度を見込むのが一般的で、立地・建物・許可に価値があるうちに早めに動き始めるほど選択肢を広く保てます。

① 相談・方針整理:「会社ごと譲るのか、不動産として売るのか」を切り分け、希望条件(雇用維持・時期・価格感)を整理します。② 簡易査定:収益状況や資産から価格の目安を見立てます(後述)。③ 候補探索:秘密を守りながら、社名を伏せたノンネーム資料(ティーザー)で買い手候補に打診します。中小M&Aガイドラインに沿い、社名の開示は買い手候補ごとに売り手の個別同意(ネームクリア)を取り、秘密保持契約を結んだうえで行います。

④ 基本合意(LOI):価格や大枠の条件で折り合った段階で、独占交渉などを定めた基本合意を結びます。⑤ デューデリジェンス(DD):買い手が財務・労務・法務などを調査します(簿外債務・係争の切り分けは次のセクションで詳述)。⑥ 最終契約:DDの結果を踏まえて表明保証や価格を調整し、最終契約を締結します。⑦ クロージング:許可承継・登記・代金決済を実行します。営業許可の承認は経営権移転の「前」に済ませる必要があるため、スケジュールの逆算が重要です。

承継売却で特に大切なのは、従業員の雇用や取引先との関係を「壊さずに」引き継ぐことです。人手不足のいま、現場を知るスタッフは買い手にとっても貴重な資産であり、雇用維持を希望条件として買い手探しと交渉に織り込むことができます。秘密保持を徹底し、従業員や取引先に動揺が走らない順序で進めることも、相談先の腕の見せどころです。

簿外債務・労務・係争が心配。どう切り分ける?(個別選択式DD)

個別選択式デューデリジェンス(DD)とは、財務・労務・法務・税務といったDDの調査項目を「全部一律」ではなく、その案件のリスクが集中している論点に絞って実施し、簿外債務・労務問題・係争を切り分ける進め方です。中小の宿の承継では、フルスペックのDDを画一的にかけるとコストと時間が膨らみ、かえって話が前に進まなくなることがあります。

宿のM&Aで買い手が最も警戒するのが、簿外債務(帳簿に表れない保証債務・未払い・リース残債など)、労務リスク(未払い残業・社会保険の未加入・退職金規程の有無)、そして係争(土地の境界・近隣トラブル・取引先との紛争)です。株式譲渡では会社ごと引き継ぐためこれらのリスクも原則として承継されるのに対し、事業譲渡では引き継ぐ資産・契約を選べるため、リスクを切り離しやすいという違いがあります。

REYADOは、こうしたリスクを「見極め・切り分け・調整」する立場を担い、DDの実行そのものは提携する士業・専門家(公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士等)が行います。これは中小M&Aガイドラインが、仲介者は確定的なバリュエーションやDDの結論を自ら下さず、必要に応じて専門家の意見を求めるよう促す——とする趣旨に沿った体制です。論点ごとに必要な調査だけを選んで組み合わせるため、買い手のコストや手間を抑えやすく、結果として売り手にとっても話を進めやすくなります。

売り手側でできる備えは、リスクを「隠さず、先に開示する」ことです。先送り中の修繕、未解決の労務・係争があっても、早めに開示するほうが後の値引き交渉や破談を防げます。隠さず開示することが買い手の安心と信頼を生み、結果的に良い条件と早い成約につながる、というのが実務の通例です。

ホテル・旅館はいくらで売れる? 価格はどう決まる?

価格は、収益を生んでいる宿なら「収益還元」が基本になります。これは「年間の純収益 ÷ 買い手の期待利回り」で価格の目安を出す考え方で、たとえば年間の純収益(売上から運営費を引いた利益)が2,000万円、買い手の期待利回りが5%なら、2,000万円 ÷ 5% = 4億円が一つの目安です(これは計算式の例示で、この水準で売れることを示すものではありません)。利回りが低いほど価格は高くなります。

会社や事業ごと譲るM&Aでは、これに加えて「時価純資産+営業利益の数年分」という事業承継型の評価が使われることもあります。収益が安定している宿は収益還元、資産や再生余地が主な価値の宿は不動産価値や事業価値——というように、物件の性格で評価のレンズが変わります。両方で試算し、高い方を軸に交渉するのが売り手の定石です。

赤字や休業中でも、価格が付かないとは限りません。土地・建物・温泉・営業許可といった「不動産・資産としての価値」に注目する買い手がいるためで、現在の損益が決定的な問題にならない場合があります。収益還元で売れる物件はその方式で、そうでない物件は不動産として売る——この使い分けができるかどうかが成否を分けます。

なお、具体的な相場や利回りの水準は、立地・規模・築年・運営状況によって大きく変わるため、本記事で一律の数値を示して「いくらで売れる」と断定することはできません(実際の評価は個別査定が前提です)。REYADOの取り扱いは、譲渡希望額6,000万円規模からです。まずは収益状況に応じた簡易な見立てから始められます。

手数料はいくら? 中小M&Aガイドラインはどう守られる?

REYADOの手数料は、事業承継として買い手からコーディネート費用が発生するスキームでは、売り手の成功報酬は無料です。費用は登録手数料5万円(税別・税込55,000円)のみで、これも成約時に全額返金されるため、成約すれば実質無料になります。買い手側は成約価額に対し、ホテル・旅館は5%、一棟貸しは4.5%を申し受け、最低手数料は300万円(税別)です。着手金・月額報酬・タイムチャージはありません。

一方、宿を「不動産」として売買するスキーム(土地・建物の売買)では、売り手にも宅地建物取引業法の上限の範囲内(売買価格×3%+6万円+税)で通常の仲介手数料が発生します(前述の買い手5%/4.5%は事業承継〈M&A〉スキームの場合の料率で、不動産売買スキームでは買い手・売り手とも宅地建物取引業法の上限の範囲内です)。これは法律で上限が定められた完全成功報酬で、売れなければ費用はかかりません。どちらのスキームになるか、費用がいくらかは、契約前に書面で明確にご説明します(媒介契約・重要事項説明など宅地建物取引業法上の独占業務は、宅地建物取引士が行います)。なお、取り扱いは譲渡希望額6,000万円規模からです。

REYADOは、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月改訂)を遵守しています。第3版では、仲介契約の締結前に「相手方の手数料」まで含めて書面で開示する義務や、追加手数料を払う相手への便宜・有利不利な情報の秘匿といった利益相反行為の禁止が明文化されました。REYADOはこれらを契約で明記し、社名を相手に開示する前の個別同意(ネームクリア)も徹底します。

利益相反については、はっきりお伝えします。売り手から預かった案件で、結果としてREYADOが買い手側も担当する「両手」になる場合がありますが、その際は両当事者に立場を開示し、中立・公平に進めます。そして、売り手から預かった宿を他社に十分公開せず自社の買い手だけで成約させる「囲い込み」は行いません。常に売り手の目線で、国内に加え海外(米・豪・台・香・星等)の買い手候補にも広くつなぎ、売り手にとって有利な条件を比較し、優先します。最初のご相談は、売ると決める前の「会社ごと譲るか、不動産として売るか」の切り分けからで構いません。まだ方針が固まっていない段階の壁打ちでも、無料相談で個別に整理できます。ご相談の内容と社名は秘密保持を徹底し、ご同意なく外部に開示することはありません。

よくある質問

ホテル・旅館のM&Aとは何ですか?

ホテル・旅館のM&Aとは、施設を土地・建物という「不動産」としてではなく、営業許可・従業員・取引先・予約データを含めた「事業ごと」、次のオーナーへ引き継ぐ手法です。主に、運営会社の株式を売る「株式譲渡」と、事業を構成する資産・契約を個別に移す「事業譲渡」の2つに分かれます。後継者不在の宿を黒字のまま残したい場合に多く選ばれます。

ホテルのM&Aは、M&A仲介と不動産仲介のどちらに相談すべきですか?

まず「事業ごと譲る」か「不動産として売る」かで決まります。営業許可や従業員ごと引き継ぐ承継ならM&A(株式譲渡・事業譲渡)に通じた相談先、建物・土地の価値が中心なら不動産仲介(宅地建物取引業者)が向きます。旅館・ホテル特化の専門仲介は宿特有の論点に強いのが特徴です。判断がつかないうちは切り分けの相談から始め、1社で決めず複数の見立てを比べると安全です。

後継者がいなくても、ホテルや旅館は売れますか?

売れる可能性があります。後継者不在は廃業の主因ですが、立地・建物・営業許可・温泉に価値があれば、事業ごと引き継ぐ買い手や、不動産として評価する買い手が見つかる場合があります。黒字で従業員ごと残したいなら株式譲渡による事業承継、赤字や休業中なら不動産としての売却——というように道は分かれます。価値があるうちに早めに動くほど選択肢を広く保てます。

旅館業の営業許可は、買い手に引き継げますか?

引き継げます。会社ごと買う株式譲渡なら、許可・従業員・契約は原則そのまま継続します。事業譲渡も、2023年12月施行の改正旅館業法により、譲受人が事前に都道府県知事等の承認を得れば、新規取得なしに営業者の地位を承継できるようになりました。承認前に経営権を移すと無許可営業とみなされるおそれがあるため、クロージングの2〜3か月前からの保健所への事前相談が安全です。

ホテル・旅館のM&Aの手数料はいくらですか?売り手は無料ですか?

事業承継として買い手からコーディネート費用が発生するスキームでは、売り手の成功報酬は無料で、費用は登録手数料5万円(税別・成約時に全額返金=実質無料)のみです。一方、宿を「不動産」として売買するスキームでは、売り手にも宅地建物取引業法の上限の範囲内(売買価格×3%+6万円+税)の仲介手数料が生じます。買い手側は成約価額に対しホテル・旅館5%・一棟貸し4.5%(最低300万円・税別)です(この5%/4.5%は事業承継〈M&A〉スキームの場合の料率で、不動産売買スキームでは買い手・売り手とも宅地建物取引業法の上限の範囲内です)。着手金・月額はありません。

ホテルや旅館は、いくらで売れますか?相場はありますか?

一律の相場をお示しすることはできません。価格は立地・規模・築年・収益状況で大きく変わるためです。収益を生む宿は「年間の純収益÷買い手の期待利回り」という収益還元が基本で、たとえば年間純収益2,000万円・期待利回り5%なら4億円が目安です。赤字や休業中でも、土地・建物・温泉・許可の価値で評価される場合があります。実際の金額は個別の査定が前提です。REYADOの取り扱いは譲渡希望額6,000万円規模からです。

M&Aによる承継売却は、どれくらいの期間がかかりますか?

一般的に、相談から成約まで数か月〜1年程度を見込みます。「相談→簡易査定→候補探索→基本合意→デューデリジェンス→最終契約→クロージング」の流れで進み、買い手探しや調査、許可承継の段取りに時間がかかります。特に営業許可の承認は経営権移転の前に済ませる必要があるため、スケジュールの逆算が重要です。立地・建物・許可に価値があるうちに早めに動くほど、選択肢を広く保てます。

簿外債務や労務問題、係争があると売れませんか?

直ちに売れなくなるわけではありません。REYADOは簿外債務・労務・係争といったリスクを切り分ける「個別選択式デューデリジェンス」を前提に、リスクが集中する論点に絞って調査を組み立てます(DDの実行は提携する公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士等が担います)。リスクを切り離したい場合は事業譲渡が選ばれることもあります。大切なのは隠さず先に開示することで、それが早い成約と良い条件につながります。

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