旅館の売却相場はどう決まる?|収益還元法と取引事例でわかる価格の考え方【2026年版】

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執筆・監修:宮﨑洋平(宅地建物取引士)/株式会社REYADO 代表・宅地建物取引業 神奈川県知事(1)第33154号

旅館の売却相場は、収益を生んでいる物件は収益還元法(年間NOI÷還元利回り)、まだ収益化できていない物件は類似物件の取引事例比較を目安に算出されることが多く、そこに立地・稼働実績・建物設備の状態・旅館業許認可の承継可否・温泉権の有無といった個別要因が加味されます。

「うちの旅館、実際いくらで売れるのだろう」——後継者不在や体力的な理由で売却を検討し始めたとき、多くのオーナーが最初にぶつかる疑問です。旅館は戸建てやマンションと違い、稼働実績や許認可の承継可否まで絡むため相場感がつかみにくいとされます。REYADOでは、選択式DD・フルオープン募集・海外投資家展開まで踏まえて価格帯を検討します。本記事では、まず査定の基本枠組みと価格を左右する要因を整理します。

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旅館の売却相場はどう決まる?査定の基本は「収益還元法」と「取引事例比較」

旅館の売却価格を検討するとき、不動産としての価値を測る基本の枠組みとしてよく使われるのが「収益還元法」と「取引事例比較法」です。

収益還元法は、旅館が生み出す年間の純収益(NOI)を還元利回り(Cap Rate)で割って価格を算出する考え方です。NOIは、年間売上から運営費などの変動費、修繕費・固定資産税などの固定費を差し引いた額です。

価格の目安 = 年間NOI ÷ 還元利回り

たとえば年間NOIが800万円、還元利回りを8%とすると、800万円÷8%=1億円が一つの試算例になります。還元利回りは立地・需要・建物のリスクなどで物件ごとに個別に設定されます。

一方取引事例比較法は、まだ収益化できていない旅館で使われることが多く、周辺エリアの類似成約事例を坪単価などから補正して価格水準を推定します。なお売却価格がそのまま手元に残るわけではなく、借入金の返済や仲介手数料を差し引いた額が実際の手取りです。

旅館の査定は収益の有無で手法が分かれる:収益を生んでいる旅館は収益還元法、収益化できていない旅館・別荘は取引事例比較法
収益を生んでいる旅館は収益還元法、収益化できていない旅館・別荘は取引事例比較法で査定するのが基本の考え方です。

旅館の売却価格を左右する5つの要因

同じ客室数・延床面積の旅館でも、売却価格には差が生じます。査定にどう影響するか、5要因を整理します。

  • 1. 立地・アクセス:駅・観光地からの距離や温泉地としての知名度が、稼働率とADR(平均客室単価)を左右します。
  • 2. 稼働実績(稼働率・ADR):直近1〜3期の実績が査定の主要な入力値で、実績が乏しいと取引事例比較に軸足が移ります。
  • 3. 建物・設備の状態:築年数より修繕履歴や耐震診断の有無が重視され、投資履歴が明確な物件はDDが進みやすくなります。
  • 4. 旅館業許認可の承継可否:事業譲渡か株式譲渡かで引き継ぎ方が異なり、消防法・建築基準法の適合状況で行政確認が必要になることもあります。
  • 5. 温泉権の有無:源泉を保有する旅館では取り扱いが地域慣行や契約形態で異なり、権利関係が明確な物件は評価にプラスに働きます。

REYADOの選択式DDと5要因の対応(自社の査定視点)

REYADOでは5要因を単独で見ず、買い手が懸念しやすい論点ごとに選択式DDのカテゴリへ振り分けて整理しています。

  • 立地・アクセス/稼働実績 → 事業性DD(需要・収益性の検証)
  • 建物・設備の状態 → 物件DD(修繕・耐震・工事履歴)
  • 許認可の承継可否 → 許認可DD(承継可否・行政確認)
  • 温泉権の有無 → 権利関係DD(引湯契約・組合関係)
  • (全案件共通) → 簿外債務・労務・係争DD

論点を分けて整理しておくと、買い手側のDDが進みやすくなります。「自分の旅館だとどのレンジか」は個別に異なるため、気になった方は無料診断で自分の旅館の相場レンジを確認できます。

相場感をつかむ:収益還元法の試算イメージ(架空の数値です)

数字で見るとイメージがつかみやすくなるため、架空の条件でシミュレーションします。以下は説明用に設定した仮の数値であり、実際の成約価格や取引データではありません。

  • 年間NOI(営業純収益)を2,000万円と仮定
  • 還元利回りを6%〜8%のレンジで試算(地域・規模・築年数・稼働実績で個別に異なります)

計算式は「価格=NOI÷還元利回り」です。

  • 還元利回り6%の場合:2,000万円÷0.06=約3.3億円
  • 還元利回り8%の場合:2,000万円÷0.08=約2.5億円

同じ年間収益でも、還元利回りの設定次第で評価額には数千万円〜1億円規模の差が生じ得ます。稼働実績の蓄積期間も、還元利回りを判断する材料の一つとされます。なおこの試算はNOI安定発生が前提で、未収益化の旅館・別荘は取引事例比較が目安です。

売却相場を上げるためにオーナーができること

売却検討の初期段階でも、価格に影響し得る要因の一部はオーナー自身の準備で整理できます。

  • 稼働実績の可視化:直近2〜3期分の稼働率・客室単価をまとめておくと、収益還元法での査定がしやすくなります。
  • 修繕・設備履歴の整理:大規模修繕や設備更新の時期を書類化しておくと、買主側のDDで将来コストを見積もりやすくなります。
  • 許認可関連書類の整理:旅館業許可証、消防法令適合通知書、温泉利用許可などを整理しておくと、承継可否の確認がスムーズになります。
  • 簿外債務・係争の棚卸し:労務や取引先との契約関係を書面化しておくと、DDの論点整理に役立ちます。

最初の売り出し価格が、売却の成否を左右します

最初の価格設定は、売却を進めるうえで非常に重要なポイントです。すでに他の不動産会社との間で価格を設定している場合は、その売却価格が実際の成約事例と乖離していないか、注意が必要です。

市場価格と比べて高い価格を設定した場合は売れ残るケースが多く、販売期間の長期化や値下げの繰り返しにより、結果として損につながる場合が多くみられます。ご自身が売りたい希望価格や不動産会社に提案された価格が、市場価格と乖離していない適正な売り出し価格になっているかだけは、必ず確認しましょう。

専門家の関与が必要な部分も多く、早い段階での相談が手戻りを減らします。相続で旅館を引き継いだ場合の売却タイミングや税金の考え方は、「相続した不動産を売却する前に知るべきこと|3年ルール・税金・選択肢の選び方」もあわせてご参照ください。

まとめ:相場を正確に知る第一歩は個別査定から

旅館の売却相場は、収益還元法(年間NOI÷還元利回り)または取引事例比較を基本の目安に、立地・稼働実績・建物設備・許認可の承継可否・温泉権の有無が加わって価格帯が形づくられます。

同じエリア・同じ客室数でも、稼働率や修繕履歴、許認可の引き継ぎやすさ次第で評価は大きく変わります。売却の進め方や許可の引き継ぎ全体は「旅館の売却」完全ガイドでも整理していますので、あわせてご覧ください。

REYADOは宅地建物取引業者(神奈川県知事(1)第33154号)として、収益還元法と取引事例の両面に加え、簿外債務・労務・係争を切り分ける選択式DDを組み合わせて査定します。レインズ掲載に加え国内外へフルオープンで募集し、海外投資家展開にも対応しているため、囲い込みのない条件で売却先の選択肢を広げられます。売却時期が未定の段階でのご相談も可能です。

まずは個別に相場を知りたい方は、専門家との無料相談で想定価格帯を確認できます。

よくある質問

旅館の売却相場は自分でどこまで調べられますか?

稼働率や客室数などの基本情報から、収益還元法や取引事例比較の考え方で大まかな目安は把握できます。ただし温泉権や許認可の承継可否、簿外債務の有無など個別要因で評価が変わるため、正確な金額は専門家の診断が必要です。

旅館業許可や温泉利用権は、買主にそのまま引き継げますか?

旅館業法第3条の2(事業譲渡)などに基づき、都道府県知事の承認により営業者の地位を承継できる制度があります(適用可否は自治体・案件ごとに異なるため個別確認をおすすめします)。株式譲渡なら営業者(法人)自体が変わらないため許可はそのまま継続し、合併・分割(同法第3条の3)や相続(同法第3条の4)にも承認による承継規定があります。施設や欠格事由の確認は必要です。温泉利用権も引湯契約や組合との関係で個別協議が必要になるケースがあります。

査定を依頼してから結果が出るまで、どのくらいかかりますか?

決算書や登記情報をもとにした簡易診断は数日程度で目安が示されるケースが多いです。現地調査を伴う詳細な査定は、物件規模や資料の揃い方で数週間程度かかることもあります。早く目安だけ知りたい場合は、まず無料診断から始めるのが確実です。

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