旅館の売却を考えたら最初に読む記事|相場・流れ・許可の引き継ぎを宅建士が解説

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「この宿も、自分の代で終わりかもしれない」。そう考えたことのある旅館のオーナーは、少なくありません。後継ぎがいない、体力的に厳しい、設備の修繕費が重い——理由はさまざまですが、多くの方が「廃業するしかない」と思い込んでいます。

しかし実際には、廃業の前に「売却」という選択肢があります。中小企業庁の試算では、経営者が70歳以上となる中小企業のうち約127万社で後継者が決まっていないとされています。そして実際に、毎年休廃業・解散する企業のおよそ半数は、赤字ではなく黒字のまま事業を閉じています(中小企業白書)。裏を返せば、価値が残っているのに、買い手と出会えないまま消えていく宿が大量にあるということです。

この記事では、旅館の売却を考え始めた方に向けて、「いくらで売れるのか」「どう進めるのか」「営業許可はどうなるのか」を、専門用語をかみくだいてご説明します。読み終わる頃には、最初の相談に行く準備が整っているはずです。

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旅館は今、売れる時代になっている

まず知っていただきたいのは、宿の買い手は増えているという事実です。数字にもはっきり表れています。

主要なM&A仲介サイトに掲載される宿泊業の売却案件は、2024年末の742件から2025年半ばには903件へと約22%増え、それでも買い手がつき続けています。ホテルへの投資額は2024年に1兆円を超えるまで回復しました(CBRE調べ)。海外の買い手の動きも活発です。MSCIリアル・アセッツの調査では、日本のホテル取引に占める海外投資家の比率が47%(2023年3月までの1年間)と、約10年ぶりの高さを記録しました。背景にはインバウンドの力強い回復があり、外国人は今や国内の宿泊者全体の約27%を占めています(観光庁・宿泊旅行統計)。

買い手は大手チェーンだけではありません。個人の投資家、宿を自分で営みたい移住希望者、新規参入を目指す中小企業、そして海外の投資家まで、層が広がっています。REYADOにも、国内外から「日本の宿を買いたい」という登録が届いています(→収益物件をお探しの方はこちら)。

「うちのような古い宿に買い手なんてつかない」と思われるかもしれません。しかし買い手が見ているのは、今の儲けだけではありません。建物、温泉、立地、そして営業許可そのものに価値を見いだす買い手がいます。実際にREYADOでは、いまの売上ではなく「不動産としての価値」を軸に取引を組み立てる方法をとっています(詳しくは記事の後半でご説明します)。

売却価格はどう決まるか|相場の考え方

旅館の売却価格に、定価はありません。ただし、目安となる計算の考え方はあります。中小企業のM&A(会社や事業の売買)で広く使われるのは、次の式です(中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル」が示す考え方)。

売却価格の目安 = 時価純資産 + 営業利益 × 2〜5年分

言葉をかみくだくと、こうなります。

  • 時価純資産:土地や建物などの資産を「今売ったらいくらか」で計算し直し、借入金などを差し引いた、正味の財産
  • 営業利益:宿の本業で出ている、1年あたりの儲け

たとえば、時価純資産が5,000万円、営業利益が年1,000万円の旅館なら、「5,000万円+1,000万円×3年=8,000万円」がひとつの目安です。

大切なのは、赤字でも値がつく場合があることです。営業利益がなくても、土地・建物・温泉・許可といった資産そのものに価値があれば、買い手は現れます。逆に、利益が出ていても建物の傷みが激しければ、修繕費の分だけ評価は下がります。最終的な価格は買い手との交渉で決まるため、まずは専門家に資産と収益の両面を見てもらうのが近道です。

価格を左右する5つの要素

同じ規模の旅館でも、次の5つで評価は大きく変わります。

  1. 立地:観光地への近さ、駅やインターからのアクセス
  2. 温泉:源泉を持っているか、引き湯か。泉質と湯量
  3. 建物と設備の状態:配管、給湯、空調、消防設備、外壁。修繕の先送りは査定で見られます
  4. 収益と稼働率:直近だけでなく、数年分の月別の数字
  5. 許認可:旅館業の営業許可の種別と、引き継ぎのしやすさ

ご自身の宿の強みがどこにあるかを整理しておくと、相談がスムーズになります。

売却の流れ|相談から引き渡しまで

標準的な進み方は、次の7ステップです。

  1. 無料相談:現状と希望(金額・時期・従業員の扱いなど)を整理します
  2. 価値の評価:資産と収益から、売却価格の目安を算出します
  3. 買い手探し:宿の名前や場所を伏せた資料で、秘密を守りながら買い手候補を探します
  4. 基本合意:条件が合う買い手と、大枠の合意を結びます
  5. 買収監査(デューデリジェンス):買い手が、財務や建物の状態を確認します
  6. 売買契約:最終条件を確定し、契約を結びます
  7. 許可承継の申請と引き渡し:行政の承認を得て、宿を引き継ぎます

期間は宿の規模や条件によりますが、REYADOでは不動産仲介の取引をベースに、調べる項目を必要なものに絞るため、標準的なケースでご相談から成約まで3か月以内を目安としています。M&A仲介会社に専属で依頼する形では1〜2年かかる例もあり、進め方によって期間は大きく変わります。

「会社ごと」売るか、「宿だけ」売るか

売却には大きく2つの方法があります。

  • 株式譲渡:会社ごと買い手に譲る方法。手続きは比較的シンプルですが、会社の借金や契約もすべて引き継がれます
  • 事業譲渡:宿の事業と資産(建物・許可・屋号など)だけを選んで譲る方法

小規模な旅館の売却では、事業譲渡が選ばれることが多くなっています。理由は買い手の安心感です。事業譲渡なら、帳簿に載っていない借金(簿外債務)や過去のトラブルを買い手が引き継がずに済むため、買い手が手を挙げやすく、結果として売りやすくなるのです。

REYADOの進め方|「不動産として売る」という方法

REYADOでは、この事業譲渡をさらに一歩進めた形として、買い手が新しい会社をつくって宿を引き継ぐ方法を基本にしています。流れは次の3つです。

  1. 旅館業の営業許可を、新しい会社へ承継する
  2. 宿は「不動産としての価値」を軸に売買する。オーナーはその代金を手にして、いまの事業の廃業手続きを進められる
  3. 働き続けたい従業員の雇用や、引き継ぎたい顧客・取引先は、新しい会社がそのまま引き継ぐ

この方法なら、買い手は引き継ぐものを選べるため、いまの収支が赤字でもまったく問題ありません。「再生して立て直せば利益が出る」と買い手が判断すれば、いまの売上とは切り離して、土地・建物・温泉・許可の価値で取引が成立します。一般的なM&Aの型にとらわれず、設備や物件のうち買い手が希望する部分だけを引き継ぐ形にも対応できます。こうした進め方ができるかどうかは、宿の状況によりますので、無料相談でご確認いただけます。

営業許可は、買い手に引き継げます

「買い手が許可を取り直すのは大変では?」という心配は、今は不要です。

2023年12月13日に施行された改正旅館業法により、事業譲渡でも、譲り受ける人が都道府県知事等の事前承認を受ければ、営業許可を取り直さずに営業者の地位をそのまま引き継げるようになりました。審査の標準的な期間はおおむね20日程度です(自治体により異なります)。

ひとつだけ注意点があります。承認の申請は、譲渡の効力が発生する前に行う必要があります。順序を間違えると承継が認められないため、手続きに慣れた専門家(行政書士など)と進めるのが安全です。REYADOは行政書士と連携して、この申請を支援しています。

失敗しないための注意点4つ

  1. 「囲い込み」に注意:依頼した会社が、自社で買い手を見つけて手数料を両側から取るために、ほかの会社に物件情報を見せないことがあります。これを囲い込みと呼び、買い手の数が減って売却価格が下がる原因になります。「他社にも情報を出してもらえますか」と最初に確認しましょう
  2. 手数料は事前に確認:不動産売買の仲介手数料には法律上の上限があります(売買価格×3%+6万円+消費税)。着手金の有無、成功報酬以外の費用も、契約前に書面で確認しましょう
  3. 秘密保持を徹底する:売却の話が従業員や取引先、常連のお客様に漏れると、営業に影響が出かねません。名前を伏せて買い手を探す進め方ができるか、相談先に確認しましょう
  4. 資料を少しずつ準備:登記簿、建物図面、旅館業許可証、直近2〜3期分の決算書(または収支のわかる資料)。すべて揃っていなくても相談は可能です

どこに相談すればいいか

相談先には、それぞれ特徴があります。

  • M&A仲介会社:会社売買の専門家。大型案件に強い一方、専属契約で期間が長くなりがちです
  • 事業承継・引継ぎ支援センター:国が各都道府県に設置した公的窓口。無料で相談でき、最終的には民間の仲介会社へ橋渡しされます
  • 宅地建物取引業者(不動産会社):不動産の売買として進めるため、資産価値ベースの取引と早さが持ち味です

REYADOは、旅館・ホテル・一棟貸しの売買を専門とする宅地建物取引業者です。着手金なしの成功報酬制で、囲い込みをせず、国内に加えて海外の買い手候補にもリーチします。お取り扱いは譲渡希望額6,000万円規模からです。

まとめ

  • 旅館は「廃業しかない」時代ではなく、買い手の層が広がっています
  • 価格の目安は「時価純資産+営業利益×2〜5年分」。赤字でも資産に値がつく場合があります
  • 営業許可は、改正旅館業法により事前承認で買い手へ引き継げます
  • 囲い込み・手数料・秘密保持の3点は、相談先を選ぶときの確認ポイントです

宿を手放すかどうかは、人生の大きな決断です。だからこそ、判断材料は早めに揃えておく価値があります。まずは現状を整理するところから、お手伝いします。

監修:株式会社REYADO(宅地建物取引業 神奈川県知事(1)第33154号)

よくある質問

旅館はいくらくらいで売れますか?

一律の相場額はありませんが、中小規模の旅館では「時価純資産+営業利益の2〜5年分」が目安とされます(中小企業庁の事業承継マニュアルが示す算定の考え方)。たとえば時価純資産5,000万円・営業利益が年1,000万円なら、8,000万円前後がひとつの目安です。立地・温泉・設備・稼働率で上下するため、最終的な評価には個別の精査が必要です。

赤字や休業中でも売れる可能性はありますか?

あります。買い手は直近の損益だけでなく、土地・建物・温泉・営業許可・立地といった資産の価値や再生の余地を評価するためです。譲渡する資産を選べる事業譲渡なら、買い手が簿外債務(帳簿に載っていない借金)を引き継がずに済むため、赤字や休業中の宿でも取引が成立しやすくなります。

売却を考え始めたら、最初に何をすればいいですか?

資料を完璧に揃える必要はありません。まずは登記簿や直近の収支がわかる資料など、手元にあるものだけで専門家の無料相談を受け、売却価格の目安と進め方を知ることをおすすめします。希望の時期・金額・従業員の扱いを自分の中で整理しておくと、相談が具体的になります。

売却を進めていることを、従業員やお客様に知られたくありません。

名前や場所を伏せた資料で買い手を探す進め方が一般的です。買い手候補には秘密保持契約を結んだうえで詳細を開示するため、従業員・取引先・お客様に知られずに検討を進められます。相談の段階から秘密は守られますので、安心してご相談ください。

古い旅館ですが、営業許可は本当に引き継げますか?

引き継げます。2023年12月13日施行の改正旅館業法により、譲り受ける人が都道府県知事等の事前承認を受ければ、許可を取り直さずに営業者の地位を承継できます。建物が現行の基準で許可を取り直すのが難しい古い宿ほど、既存の許可を引き継げるこの仕組みの価値は大きくなります。申請は譲渡の効力発生前に行う必要があります。

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